昼寝
ある日探偵事務所で逸美ちゃんが船をこいでいた。
読書中に眠くなってしまったのである。
「ふふっ」
俺より年上だから普段はお姉さんぶってるけど、本を開いたままお腹の上に乗せてうとうとしている姿はなんだか微笑ましい。
場所も和室だったので、布団を出してかけてあげることにした。風邪を引いたらかわいそうだしな。
襖を開けると、上の段にかけ布団が入っている。
「よいしょ」
かけ布団を引っ張っていると、取るのを手伝ってもらえた。
「ありがとう」
「ううん、いいのよ」
て、あれ?
なぜか逸美ちゃんが起きてしまったらしく、俺がかけ布団を取ってもらった。
そして、これもなぜだか、逸美ちゃんはさらに敷布団も取り出してくれて、ベッドメイクをして俺を寝かせてくれた。
「おやすみ~」
逸美ちゃんは席を外し給湯室に行ってしまった。
その結果、眠くもないのに布団に寝かされた俺だけがそこには残ったのだった。
俺は天井を見つめてつぶやく。
「なんだこれ」
そこに羊かんをかじりながらふらふらと歩いている凪が通りかかり、横になっている俺を見下ろして言った。
「なにしてるの?」
「こっちが聞きたいよ」
おわり
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