エピローグ ポケモン図鑑を完成させた

 良人さんとのバトルと交換から、二週間ちょっと経過したある日。

 探偵事務所で、俺と凪と逸美ちゃんと鈴ちゃんがポケモンのゲームをしていると、ノノちゃんもやってきて五人でのんびり遊んでいた。

 作哉くんは用事でまだ来られないらしい。

 この五人でこうやってだらだらすることって多いよな。

「そういえば、良人さん最近来てないね」

 凪のつぶやきに、俺は教えてあげる。

「なんかバイトが忙しいんだって。小テストもあって多忙だからまたあとで来るってさ。今週でやっと落ち着くとかなんとか言ってたな」

「へえ。じゃあ忙しくてポケモンもやってないか」

「どうでしょうね、良人さんすごくポケモンにハマってましたからね」

 と、鈴ちゃんがくすっと笑った。

「ノノ、良人さんにお話ししたいことたくさんあります」

 逸美ちゃんはにこにことうなずいて、

「うんうん、ノノちゃんは最近良人さんに会ってなかったからね~。わたし昨日探偵事務所を出るときに、ちょうど会ったわよ」

「そうなんだ」

「あ、そのとき、明日行けたら行くって言ってたかも」

「ふーん。良人さん、来るのか。ぼくちょっとトイレ」

 凪が席を立って、トイレに入ったときだった。

 入れ違いに探偵事務所のドアが開いて、良人さんがやってきた。

「やあ。みんな。ちょっと聞いてよ」

「なんですか?」

 俺が聞くと、良人さんは俺たちにゲーム機をジャジャーンと見せた。

「ちょっと見てよ」

 良人さんは和室に上がり、ゲーム画面を俺たちに向かって見せる。

「どれですか?」

「これこれ。すごいでしょ! 図鑑も全部集まったんだ! どうだ。エッヘン」

 かなり得意そうに胸を張っている良人さん。

 しかし、俺たちはうまく言葉が出てこない。

 一拍遅れて俺は驚いてみせた。

「すごいじゃないですか! おめでとうございます!」

「そ、そうですね。すごいです。おめでとうございます」

 鈴ちゃんもすぐに俺に続けたが、逸美ちゃんとノノちゃんは互い顔を見合わせて、それから二人そろって「おめでとう」を言った。

 この微妙な反応に、良人さんはなにか変だと気付いたらしい。

「みんなありがとう。でも、なんかみんなおかしくない? もしかしてみんな、もうポケモン飽きてやってないとか?」

 このタイミングで凪がトイレから出てきて、良人さんに気付く。

「あ、来てたのか」

「凪くん! 見てよ、ボク図鑑完成させたんだよ。すごいでしょう? フフン」

「なんだって?」

 食いついて良人さんのゲーム画面に顔を近づける凪だったけど、その画面を見て、残念そうにため息をついた。

「なーんだ」

「え? なにか間違ってる?」

「いや。新作の方でもう図鑑完成させたのかと思ったら、まだ古い方やってるんだもん。ぼくはぼくでやらないと」

 凪はこたつに入ると、またゲームを再開した。

「し、新作?」

 固まったまま動かなくなる良人さん。

「そ、そうなんですよ。ついに五日前に発売されたんです」

「いまはみんなそっちをやってるんです。発売されたばかりですしね。さっさとクリアしちゃった作哉さん以外はシナリオ進めてるんです。あはは」

 俺と鈴ちゃんが言いづらいながらも説明すると、良人さんは「がくっ」と声に出して頭をもたげた。

 ノノちゃんが良人さんを見上げて、

「だから、良人さんもまた一緒に、ポケモンやりませんか?」

「わからないところはぼくたちが教えてあげるからさ」

 凪も言い足すと、良人さんは叫びながら立ち上がった。

「うおぉぉ! ボクはやるぞー! みんな、また始めるからよろしくね」

俺たちはうなずいた。

ポケットモンスターの世界へようこそ。

おわり

AokiFutaba Works 蒼城双葉のアトリエ

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