原宿に服を買いに来た おまけのおまけ

 凪と鈴ちゃんも試着したタイミングで、運悪く作哉くんとノノちゃんと良人さんが探偵事務所にやってきて、俺たち三人は盛大に笑われてしまった。

「やっ、見ないでくだしゃい」

 一番恥ずかしがっている鈴ちゃんは両手で顔を覆っている。

 俺はなかなか顔を上げられず、凪は無表情に立ち尽くしていた。

 作哉くんはニヤリと怖い顔を愉快そうにゆがませて、

「似合ってるぜ、ハッ」

「手編みですか? ステキです。ふっ」

 と、あのいい子のノノちゃんまで笑いをこらえきれない。

「へえ。ボクの分もあったら着るのになー。あはは」

 良人さんは人を馬鹿にしたように笑っている。

 すると、逸美ちゃんが笑顔で言った。

「実は、他にも作ってきたの~!」

 と、黄色のセーターとオレンジ色のセーターを手に持つ逸美ちゃん。

 なんとこの二人にも、逸美ちゃんは手編みのセーターを作っていたらしい。

「ノ、ノノは大丈夫ですよ? えへへ。本当に」

「そ、そうだぜ! オレは寒さとか感じねェし、少なくともオレには必要ねェよ」

「作哉くんずるいです!」

「ちょっ! オレは別にそういうんじゃ――」

 逸美ちゃんは二人の会話など聞く気もないらしく、笑顔で、

「着て」

 とだけ言った。

 渋々着た作哉くんとノノちゃんは、複雑そうな顔になる。

 その姿は、やはりピッチピチだったからである。

「うふふ、二人共可愛いわ」

 恥ずかしがる作哉くんとノノちゃんを見て、俺と凪と鈴ちゃんはくすっと笑う。さっきのお返しだ。

「テ、テメーら、見んじゃねェ」

 そのとき、隅っこにいた良人さんがぽつりとつぶやいた。

「ボクの分だけないんだね。それはそれでちょっと寂しいかも……。とほほ」


 結局、良人さんの分はなかったけど、俺は花音用の緑色の手編みのセーターをお土産にともらったのだった。

 これは、いつか着るような特別なシチュエーションが来るまでタンスの奥で眠っていてもらおうと思う。

AokiFutaba Works 蒼城双葉のアトリエ

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