鏡合わせのような彼女 おまけ
凪がなんて言ってくるのか、気まずい心境で待っていると。
「ああ、うん。よし。歯に挟まってたお肉が取れた」
ズコっと俺はこける。
「そっちかよ!」
だから口を開けていたのか。
「え? そっちって? 開がソッチ系とか言うつもり? やだ~」
俺は凪を人通りが少ないほうへと引っ張りながら、声のボリュームを落として小さめにつっこむ。
「ちげーよ。沙耶さんの潜入捜査に付き合っただけだ」
「やっぱりそうか。開がいると思ったら沙耶さんもいたし。途中どっちがどっちかわからなかったよ」
「てことは、最初から俺がいるって気づいてたのか?」
「まあね。最初に会話したやつか二回目か、それとも変な情報のやり取りみたいなのをしてたときかは不明だったけど、どれが開だったの?」
「どれもちげーよ」
わかってなかったんじゃんか。いや、こいつのことだからなぜか知っていたとか、わかっていたとか、そんなことはよくある。
はあ、と俺は大きくため息をついた。
そのとき、沙耶さんが戻ってきた。
沙耶さんは凪と俺を見て、苦笑いで言った。
「あはは。バレちゃったのね。ドンマイ、開ちゃん」
まあ、仕事の潜入捜査が終わったから、もうなんでもいいや。
「ドンマイ、開」
と、凪が沙耶さんの肩に手を置いた。
「凪くん、こっちは私。沙耶だから」
呆れ顔の沙耶さんだった。
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