サボテンを育てる おまけ
その後。
あのサボテンは逸美ちゃんによって育てられた。
たまに逸美ちゃんに代わりに水をあげてくれと頼まれたとき以外は、逸美ちゃんが面倒を見ている。
凪と作哉くんと鈴ちゃんはこっそりしゃべりかけたりもしているけど、人前だとしない。ノノちゃんは人前でも構わずサボテンにしゃべりかけたりするけどね。
あるとき、俺が逸美ちゃんの代わりに水をあげていると。
「あれ?」
花が開いてきていた。
蕾ができたのだけど、それがようやく開花し始めたのだ。
そのとき。
用事があって外に出ていた逸美ちゃんが凪と鈴ちゃんと一緒に戻ってきた。
「そこで二人に会ったの」
「こんにちは」
「来たよ」
三人に俺は言った。
「見て! 花が開いてきてるんだ」
「え? 本当?」
嬉々として逸美ちゃんが駆け足で来る。
鈴ちゃんも「見せてください」と続いた。
最後に凪が俺の前までやってきて、
「おお。毛も綺麗にお手入れされてますな」
ひとり俺の鼻の穴をのぞき込む凪の頭をつかみ、サボテンに向ける。
「そっちの鼻じゃなくてこっちだ」
「ほう」
そこへ、作哉くんとノノちゃんもやってきた。
「よお」
「みなさん、こんにちは」
凪が作哉くんとノノちゃんに手招きする。
「すごいんだ、ちょうど咲くところなのさ。二人もおいでよ」
「なんだと!? マジかよオイ」
「ノノも見たいです!」
「ほら、花が開くわよ」
そう。ちょうどいま咲くところなのだ。
ついに花が綺麗に開き切り、パッと咲いた。
まるで宝石が繭から出てきたかのような輝きを感じた。
「綺麗~」と逸美ちゃん。
「だね!」
俺も感激した。
「やべーぞ! おおっ」
「ステキなお花です」
作哉くんの驚き方はともかく、ノノちゃんもうれしそうだ。
鈴ちゃんと凪もじぃっと花を見て、
「いいですね。あのとげとげなサボテンがこんな綺麗な花を咲かせるなんて、生命の神秘を感じます」
「うん、花はいい。こんな綺麗な花を見られたのも、全部ぼくのおかげだ」
俺はぼそりと凪に言ってやった。
「おまえはまったく面倒見てないだろ」
「それほどでも~」
「褒めてない!」
ただやはり、一番感動していたのは、ここまで一生懸命育てた逸美ちゃんだったのは言うまでもない。
「ふふっ。よかったわね、サボテンちゃん」
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