防犯ブザーを持とう 逸美編
防犯ブザーをもらったあと、俺はそれをバッグに付けるようにしていた。
現在、バッグを背負って歩いていると、どうも後ろからつけられている気配がする。
しかし振り返っても誰もいない。
人ごみに紛れて見つけられそうになかった。
「どうしたんだい?」
今日は凪に付き添ってショッピングに来ていたのだ。
俺は正直に言った。
「いや、実はさっきから誰かにつけられている気がして」
「ぼくってそんなに人気のある少年だったのか」
「それは違うと思うけど」
実際、凪目当てなのかどうかもわからないけど、いざストーキングや尾行をされていると怖いものだ。
「ファンだろうか。いくらぼくが魅力的だからといって、ストーカーはいけないな。天誅が必要だ」
「なに言ってんだよ」
また歩き出すと、やはり何者かにストーキングされている気配がある。
それも徐々に距離が近づいてきている。
ガサッと、木が揺れる音がした。
すぐ後ろだ。
「いまだ!」
そう言って、凪が俺の防犯ブザーに手をかけ音を鳴らした。
ビィィィィー!!
すると、その茂み(木の後ろ)から逸美ちゃんが飛び出した。
「開くん、大丈夫!?」
「おまえかー!」
思わず大声でつっこんでしまった。
「え、逸美さんってぼくのファンだったの?」
「違うわ!」
今度は凪にもつっこみを入れた。
「開くん、なにがあったの?」
「いや、逸美ちゃんのことストーカーだと思って凪がブザーを鳴らしちゃったんだよ」
「あらっ! やだ~」
嫌なのはこっちだ。
「まあ、結果的には間違ってなかったけどね」
と、凪が腕を組んでうなずく。
「いいから行くぞ!」
そして急いで防犯ブザーを止めて、俺は凪を引っ張って、逸美ちゃんは恥ずかしさのあまり顔を隠して、その場から逃げ去ったのだった。
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