船乗り
今日、凪とゲーム屋に寄ったら、中古ゲームがものすごく安く売っていた。
安いからといってつまらなそうでもない。同じ画面で最大4人プレイできるRPGだそうで、花音もいっしょに家でやってみることにしたのである。
しかし凪は眠そうにしている。昨日別のゲームをひとりでやっていたらしい。
それでも、俺たちはゲームを始めた。
「職業を選んで、だって!」
と、花音が言った。
このゲーム、最初に職業を選ぶスタイルらしい。
「俺は勇者」
「じゃ、あたしは女盗賊!」
眠そうな顔でなかなか選ばない凪に、花音が言う。
「凪ちゃん! 職業どうするの?」
「え? ぼく? あ、これこれ。今日は船乗りで」
さらりと船乗りを選ぶ凪。
「今日はって……。これってすぐに職業変えられるのかな?」
「いいじゃん! とにかく始めよう!」
「そうだね」
俺と花音がやる気満々でゲームをスタートさせた。
すると、さっそく3人そろってのバトルが開始された。
「これ、協力しないといけないやつだ! 花音、そっちの右下お願い」
「うん、任せて! 凪ちゃんはあっちね! 左のやつ」
「て、凪! そこ動かないとやられるって」
だが、凪が動かなかったせいで、俺たちはやられてしまった。いきなりゲームオーバーだ。
「難しいね、これ……」
「序盤にしては難易度高いかもね。でも、凪が動いていれば……あれ?」
凪に抗議しようと横を見るが、凪はうとうとして半分寝ているようだった。
俺はそんな凪を見てつぶやく。
「船をこいでる」
「凪ちゃん、船乗りだもんね」
今日はって、そういうことか、と納得する俺と花音だった。
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