ある冬の日。

 探偵事務所には凪以外の少年探偵団のメンバーがいた。

「今日は特に寒いですね」

 みんなこたつに入っている中、鈴ちゃんが言った。

「そうね~。開くん冷えてない?」

「大丈夫だよ」

 俺が寒いのが苦手で冷えやすいことを逸美ちゃんは知っているのだ。でも、こうしてこたつに入っていれば問題はない。

「それにしても、凪くん遅いわね~」

 逸美ちゃんが窓の外を見る。

 作哉くんは興味なさげに、

「まあ、そのうち来んだろ」

「もしかしたら、勉強が忙しいのかしら」

 と、逸美ちゃんが的外れなことを言った。

「凪に限ってそれはないよ」

 ははは、と笑う俺に続けて鈴ちゃんも笑いながら、

「ですね! 先輩が勉強なんてしたら雪でも降るんじゃないですか?」

「かまくらが作れるくらいは降りそうだね」

 あははは、と俺と鈴ちゃんが笑うと、作哉くんも「ちげーねェ」とうなずく。

 だが、ちょうどそこにトイレから戻ってきたノノちゃんが、ハッとした顔をした。

 ん? なにかあったのだろうか。

 結局、凪はこの日、用事があるということで探偵事務所には来なかった。

 翌日。

 俺と凪と逸美ちゃんと鈴ちゃんが探偵事務所に来ていたのだが、そこへ作哉くんとノノちゃんもやってきた。

「こんにちは」

「おう」

 二人が挨拶して、和室に上がった。

 すると、こたつで寝っ転がりながらゲームをしている凪に、ノノちゃんが言った。

「凪さん、勉強してください」

 急なノノちゃんの言葉に凪は呆気に取られる。

「どうしたのさ」

「雪遊びがしたいんです」

「へ?」

 凪が大きく首をかしげた。

 よく話を聞いてみると、ノノちゃんはどうやら昨日の俺と鈴ちゃんの会話をそのまま信じたらしかった。

「凪さんが勉強すれば、かまくらが作れるって開さんと鈴さんが言ってました」

 みんながおかしくなって笑う。

「ノノちゃん、それはね」

 と、話の前後をノノちゃんに話すと、ノノちゃんは顔をやや伏せて照れた。

「そうだったんですか」

「だからね、ノノちゃん。ぼくは勉強なんてしなくていいんだよ」

 ノノちゃんに教えるように言う凪に、俺は言ってやった。

「勉強はしないとダメだけどな」

AokiFutaba Works 蒼城双葉のアトリエ

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