ゲームセンターでゲットだぜ その1
今日は少年探偵団の六人で仕事をして、その帰り道を歩いている。
「今日もいい汗かいたな~」
凪が頭の後ろで手を組んで涼しそうに言った。
「なに言ってるんですか。先輩、依頼人さんの家の高そうな壺にぶつかって冷や汗流してただけでしょ」
「あれはノノちゃんが追いかけてくるからいけないんだ」
「お仕事中に遊んじゃってごめんなさい」
ぺこりと頭を下げるノノちゃん。
「うむ。反省するように」
「おまえがな!」
と、俺はノノちゃんに偉そうに言う凪にげんこつでぐりぐりした。
「痛い痛いやめて~」
「でも、解決したんだからいいじゃない。結果よければすべて良し」
逸美ちゃんが励まして、ノノちゃんが笑顔になった。
そうして歩いていると、ゲームセンターの横を通った。
ノノちゃんの足が止まる。
「どうした? ノノ」
作哉くんに聞かれて、ノノちゃんはUFOキャッチャーの中を指差す。
ノノちゃんの頭より大きいくらいのサイズのクマのぬいぐるみだ。
「あれ、かわいいなって。欲しいなー……」
うるっとした瞳で上目遣いに見上げられて、作哉くんはため息をついた。
「ったくよ、おまえはしょうがないヤツだな。ったく。そんなに何度も言われちゃ迷惑だからな、一回だけだぞ」
「わーい!」
もろ手を挙げて喜ぶノノちゃん。
作哉くん、甘すぎだな。ふふっ。何度もどころか一回しか言ってないし。怖い顔してノノちゃんのおねだりに弱いんだから。
ギロっと作哉くんににらまれる。
「なんか変なこと考えなかったか? 探偵サン」
「いや、別に」
鋭いな。さすが。野生の勘ってやつだろうか。
すると、凪が横から茶々を入れる。
「開は、怖い顔してノノちゃんには激甘だなって思ってたんだよ」
なんでおまえは俺の頭の中がわかるんだ。
しかし作哉くんは凪をにらみつけて、
「テメーそんなこと考えてたのか!」
「ぼくじゃなくて開が~」
と、作哉くんから逃げる。
「チッ」
舌打ちする作哉くん。
あはは、と俺は苦笑いを浮かべる。
そして、作哉くんは俺たちに言った。
「つーことだ、ちょっとゲーセン寄ってこうぜ」
すると、急に凪が走り出した。
「わかったよ、ぼくも作哉くんに取ってもらう景品選んでくる!」
「テメーのなんざ死んでも取るか!」
怒鳴る作哉くんだが、凪のことはちゃんと見てもないらしい。凪が向かったのはゲームセンターじゃないのだ。
俺は凪の首根っこを捕まえた。
「待て待て。そっちはゲームセンターじゃないぞ。凪、おまえなんで隣のゲームショップに入っていこうとしてんだ?」
「作哉くんがどうしてもぼくにゲームソフトを買いたいって言うので」
「言ってない言ってない。ゲームソフトは自分で買え」
「あいよ~」
聞き分けはいいんだよな、こいつ。もっとも、返事だけだけど。
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