ゲームセンターでゲットだぜ その2
さて、俺たちはみんなでゲームセンターに入った。
さっそく作哉くんがUFOキャッチャーに挑戦するようだ。
コインを入れて、ボタンを押す。
「おし。……ここだ!」
ウイーン、ガシャ。
だが、残念ながらノノちゃんの欲しいと言ったぬいぐるみにはかすりもしなかった。
「ちくしょう! 惜しいな」
「惜しくないぞー」
横から言うけど、本人には聞こえていないようだ。
俺もどこか見てこようかな。
そう思っていると、逸美ちゃんが俺の肩に手をやって向こうを指差す。
「あっちにも楽しそうなゲームあるかも」
「そうだね。行ってみよう」
ふと、UFOキャッチャーの景品をチラチラ見ている鈴ちゃんが目に入る。うさぎのぬいぐるみのようだ。あれが欲しいのかな……。
まあ、まずは逸美ちゃんと向こうを見てこよう。
色々見ていると、難しそうなゲームがたくさんある。ゲーム自体はスマホのアプリとか携帯用ゲーム機やテレビゲームくらいしかやらないから、ゲームセンターのゲームは難しそうに感じるのだ。普段はゲームセンターなんてあんまり来ないしな。
最近じゃ、花音とお父さんが二人でゲームセンターによく行くけど、俺はあまりついて行かないのだ。
俺の足が止まる。
あ! あの景品の首長竜、カッコイイ。それにちょっと可愛い。
半分割れたタマゴから首長竜が顔を出しているぬいぐるみだ。サイズは両手に収まる程度の大きさ。
少し欲しくなったけど、どうしよう。
迷っていると、逸美ちゃんが俺の背中を押した。
「開くん。あれ、取ってあげようか」
「え?」
なんで俺が欲しいと思ったのがわかったんだ。
「開くんが欲しいものくらいわかるわよ。お姉ちゃんはなんでもお見通しなんだから。それに、開くん小さい頃から恐竜とか怪獣とか好きだもんね」
さすが。よくわかってる。
「でも、逸美ちゃん。こういうのやったことあるの?」
「お姉ちゃんに任せなさい。やったことはないけどきっと大丈夫」
「う、うん!」
期待してる。
でも、ちょっぴり鈍いところがある逸美ちゃんだし心配だ。
逸美ちゃんがコインを入れる。
ボタンを押した。
まず、横にスライド。
「それっ! やだ~。ずれちゃった~」
大きく外れて、もう一度縦方向のボタンを操作するが、やはりダメだった。
「もう一回っ」
「無理しなくていいからね」
「丈夫よ~」
本当に大丈夫かな……。
見守っていると、また逸美ちゃんがボタンを押すと同時に悲鳴を上げた。
「あーん、ずれてる~。いいと思ったのに。えいっ」
さっきよりはよくなったけど、ちょっと横がずれてるか。縦方向は投げやりに適当に押した。
が。
思いのほか、悪くない動きを見せた。
左右から掴む形のアームなのだが、左側だけにうまいこと引っかかったのだ。
「すご~い! やった~!」
「逸美ちゃんすごいよ! 天才!」
わーいと二人で喜び合っていると――
「おっとっと」
バン、と凪が機械にぶつかってきた。
そのせいでアームからぬいぐるみがこぼれ落ちる。
「まったく~。誰だ? こんなところにバナナの皮置いたやつは。後ろに機械がなかったら転んでたよ」
迷惑そうに凪がやれやれと手を広げる。
で、俺と逸美ちゃんはというと。
ずーん、と沈んでいた。
「あれ? 二人共、そんな落ち込んだ顔してどうしたのさ? もしかして、この短時間で全財産すっちゃったとか? あはは。気をつけたまえ」
「オメーが気をつけろ!」
思いっきり凪の背中を押した。
「うわ~あ~あ~」
そして、凪がふらふらと千鳥足で進み、作哉くんにぶつかった。
あ、しまった。
「なんだ!? くっそー! もう少しだったのにテメーってヤツはコノヤロー」
いや、もう少しじゃないだろ。アームはぬいぐるみにかすってもいなかったんだから。
それほど罪悪感はないけど、ちょっと俺のせいでもあるし、ごめん、作哉くん。
「だって開が」
「だってもクソもあるか!」
「うわ~」
今度は作哉くんから逃げる凪だった。
作哉くんは凪を追いかけるのを諦め、またゲームに戻った。
さて。俺も逸美ちゃんに向き直る。
「逸美ちゃん、気にしないで。十分楽しんだし満足だから」
「ううん。それじゃわたしが納得できない! 次こそは取るわよ~!」
そして、気合を入れた再挑戦が始まった。
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