信心があつい人

 お父さんの車で移動中。

 運転席にはお父さん、助手席には車酔いしやすい俺、後ろには凪と花音が乗っていた。

 ちょっとしたおつかいを四人ですることになったんだけど、街を走っているとき、お父さんがとある家を指差して言った。

「あそこの家、信心があついんだよ」

 ほう。

 今時珍しい。

 うちは死んだおじいちゃんにお線香をあげたり、年末の大掃除の時に神棚も綺麗に掃除したり、特別なことはなにもないから、どの信心がどうあついのかがいまいちピンとこない。

 俺と花音は声をそろえて、

「へえ」

 とつぶやくだけだ。

 しかし、凪がどこかの会社を指差した。

「あそこの球団も新人が熱いんだ」

「おお、球団単位でか。感心だな」

 なにも信心してない人がなに感心してるんだか。

 凪は腕組して飄々とひとりごちた。

「通りかかると、いつも威勢のよい声がする」

 信心違いか。

AokiFutaba Works 蒼城双葉のアトリエ

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