山登りに行こう おまけ1

 俺たちが探偵事務所でしょんぼりと沈んでいると、探偵事務所のドアが開いた。

 誰かお客さんだろうか。

 見れば、来訪者は良人さんだった。

 良人さんは浮かれた顔で探偵事務所に飛び込んできて、自らの服の裾を引っ張って俺たちに見せるようにした。

 お調子者特有のうるさい表情とテンションで、

「ジャジャジャジャーン!」

 落ち込んだような俺たちの顔色には気づかず、良人さんは言葉を続けた。

「見てよこれ! 実はさ、レインウェアをもらっちゃったんだよね! ふふふ、なかなかカッコイイでしょ。せっかくだからさ、ボクこれ着て出かけたいし、明日みんなで山登りに行かない?」

 俺たちは声をそろえて、

「行かねーよ!」

 と、つっこむように言った。

 凪とノノちゃんだけはなにも言わずぼーっと見ている。

「とほほ。ボクなんか悪いこと言った?」

 悲しげにつぶやく良人さんの丸まった背中を、凪とノノちゃんは優しくなでてやった。

 ノノちゃんはなにも言えずにいるが、凪は一言。

「いつものことだけど、タイミングが悪いんだ」

 良人さんは困ったように凪を見返す。

「え? なにそれ。でも、なんだかみんなのほうが落ち込んでいるように見えるんだけど、なにかあったの?」

AokiFutaba Works 蒼城双葉のアトリエ

オリジナル作品を掲載中。

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