山登りに行こう おまけ2
俺たちもそろそろ帰ることにした。
しかし。
「イタッ」
立ち上がろうとして、俺は痛みで声が出てしまった。
だが、それは俺だけじゃない。
「あたしも痛いよー」
と、花音も涙目になる。
煽りに来ただけにしか見えなかった良人さんが帰ってから、二時間近くもみんなで一言も話さずうつむいて落ち込んで、そのあと最低限の動く気力を取り戻して探偵事務所からそれぞれが自宅に帰ろうとなったとき、作哉くん以外の少年探偵団のみんなが痛みをうったえた。
「これは筋肉痛ね~。今日はたくさん歩いたから仕方ないわよ」
「ノノも痛いです」
「あたしも。運動なんて普段体育でちょっとやるだけなので」
逸美ちゃん、ノノちゃん、鈴ちゃんの三人もつらそうだ。
凪は偉そうに座ったまま俺たちを見て、
「みんな情けないぞ。ぼくくらい毎日筋トレを欠かさずムキムキの身体を維持してる人間にとっては、これくらいなんてこと――イタッ」
立ち上がろうとしたが、凪も痛かったらしい。
「おまえのどこに筋肉があるんだよ」
「先輩細いでしょ」
俺と鈴ちゃんがため息交じりに言った。
「情けないのはテメーだ」
痛みを感じない作哉くんが筋肉痛にならないのはいいとして。
「沙耶さんは痛くないの?」
俺に聞かれて、沙耶さんはからっと笑った。
「うん、私はね。普段から仕事で移動も多いし意外と動いてんだから。私だけ筋肉痛にならないなんて、私もまだまだ若いかもっ」
と、得意げな沙耶さんだった。
翌日。
沙耶さんは一日遅れで筋肉痛が来て、その日は家から一歩も動けなかったらしい。
「開ちゃ~ん、お願い! ウィッグと服貸すから私の代わりに女装だけして港区の――」
通話を切って、俺は安静に過ごすことにした。
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