手の内
「開ちゃん、凪ちゃん。占いに行こう!」
最近近所で有名だという占い師に、花音がみてもらいたいそうなのだ。
正直俺は興味なかったけど、花音をひとりで行かせるのも危険なので、いっしょについて行ってやることになった。
まあ、凪が「ぼくは行ってもいいぜ」と言ったからなんだけど。
ビルの地下にあるという占い師の元へと三人で歩いているとき、花音が聞いた。
「開ちゃんはなに占ってもらうの?」
「俺は進路について聞きたいな。花音は?」
「あたしは友達と学校のこと! 部活についても聞いておきたいよ! 凪ちゃんは?」
花音に水を向けられるが、凪は肩をすくめる。
「言えないよ。ぼくもお年頃だからね」
たいした悩みもなさそうな顔のくせしてよく言う。
「凪は手の内見せないタイプだからな」
「そうだね。ポーカーフェイスでこそ凪ちゃんだし、良い占い結果が出るといいね!」
「おう」
軽快にそれだけ答える凪だった。
占い師は、通路にテーブルを構えていた。人も結構並んでいる。やっぱりここの占いは人気みたいだ。
「みんな手を見せてるね」
「手相を見るんだってさ」
と、花音は言った。
つまり、手相占いだ。
さっそく並ぶ。
しばらくすると、俺たちの順番がやってきた。
そして、花音と俺の占いがつつがなく終わり、凪の番になった。
しかし凪はなかなか終わらない。気を利かせて占い師から少し離れた場所にいた花音がてててと俺の横に戻ってくる。
「どうしたの? 凪ちゃん、大丈夫?」
俺はやれやれといった表情を作ってみせて、親指で凪を指示した。
「凪は大丈夫だよ。それより、占い師の人のほうが困ってる」
「あら、ほんとだ」
花音が凪と占い師を見ると。
凪はテーブルのふちに指をかけて、じぃっと占い師を見つめている。
「ぼくの悩みを占いで当ててみてください」
「そ、そう言われましても……」
「信用できる占い師かどうか見極めてからじゃないと、ぼくも手の内を見せられません」
「いや、まずは手相を見せていただかないと……」
俺はぼそりとつぶやいた。
「凪は手の内を見せないタイプだからな」
こいつ、ほんとなにしに来たんだろうな。
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