お母さんの薬

 お茶の間にいるお母さんに、台所で自分のジュースを注いでいた花音が聞いた。

「お母さん、今日ビール飲む?」

 普段、お母さんはあまりお酒を飲まない。お酒が苦手というわけじゃないんだけど、そんなに毎日は飲まないっていう、それだけのことなのだ。

 お母さんは手をブンブン振った。

「薬ヤってるからいい!」

「え? 薬ヤってる?」

 花音が驚いた。

 正直、俺も驚いた。薬をヤるだなんて、そんな表現をする薬って聞いたらひとつしか思い浮かばない。

 そのとき、凪がやってきた。

「お母さん、あの薬まだヤってんだね」

 その言い方はやめろ。

 しかし、お母さんはうなずいた。

「うん、ピロリ菌」

AokiFutaba Works 蒼城双葉のアトリエ

オリジナル作品を掲載中。

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