色違いのポケモンが欲しい 前編

 前回、ギリギリの戦いをしてなんとかポケモンリーグを制覇してチャンピオンになり、無事ストーリークリアした良人さん。

 今日は俺たち少年探偵団のメンバーの中で、俺と逸美ちゃん、ノノちゃん、鈴ちゃんが探偵事務所に来ていて、そこに良人さんもやってきた。

「やあ。開くん」

「こんにちは」

 良人さんはキョロキョロと見回して、

「あれ? 凪くんはいないの?」

「はい。今日は来てないです」

「なーんだ。せっかくクリア後のストーリーも進めてバトル施設に来たって自慢したかったのに、残念だな」

「自慢? もう何連勝かできたんですか?」

「え? 良人さん、すごいです!」

 俺が質問したところで、ノノちゃんも良人さんを称賛した。

 しかし良人さんは苦笑いでいやいやと手を振った。

「まだ挑戦はしてないんだ。本当にただバトル施設に来ただけ」

「そうでしたか」

「あはは」

 俺とノノちゃんは座り直して、良人さんも和室に入って腰を下ろした。

 逸美ちゃんがお茶を持ってきて良人さんに出してあげた。

「どうぞ~」

「ありがとう。逸美さんもバトル施設ってもうやったの?」

「やったわよ。わたしだって20連勝したんだから。ね? 開くん」

 うふふ、と得意そうに言う逸美ちゃんに、俺はうなずいて、

「うん。逸美ちゃんはそんなにバトルが好きなわけじゃないけど、20連勝まではちゃんとクリアしたんだよ。難しいモードでも最高29連勝まではしてるしね」

「開くんにも聞きながら、一緒に頑張ったの」

 横からノノちゃんも自分のゲーム画面を見せて、

「ノノは難しい方で34連勝中です。作哉くんに色々アドバイスもらいながらですけど、使ってるのは好きなポケモンだけなんですよ」

 伝説のポケモンなどは使わないで小学生がそこまでできたらすごい。

実際、ノノちゃんが使いたいポケモンだけで勝てるようにアドバイスできる作哉くんがすごいとも言えるけど。

「へえ。ノノちゃんもやるね~。まあ、ボクはすぐに50連勝も達成しちゃうと思うけどね。あはは」

 またお調子に乗り始めた良人さんに、鈴ちゃんがにやりと笑いながら言った。

「そんなに簡単じゃないですよ。あたしですら最初に50連勝したときは苦戦したんですから。良人さんは普通のシングルバトルで20戦目の壁を越えられるかどうか」

「鈴ちゃんも言うじゃないか。でも大丈夫。ボクだってリーフィアたんとフライゴンでストーリーもクリアした腕前なんだ。甘くみないでよね」

 さて。

 絶対すぐに負けてしまう良人さんが最初になんて言うか、見させてもらおうかな。

 さっそくゲーム機を取り出し、バトル施設にチャレンジする良人さん。

「シングルでいいんだよね」

「そうですよ。まずはそこで20連勝を目指してください」

「よし。スタート。ん? 参加できないポケモンがいるって言われたんだけど、どれのこと?」

「伝説のポケモンですよ。パッケージになる伝説のポケモンは使用できないんです。強過ぎちゃいますからね」

「あ、そっか。確かに強いもんね。レベル低いのにいつも活躍してくれたしさ」

 ボックス機能で良人さんはポケモンを入れ替えた。

「これでオッケー。えっと、3体を選出? へえ。3対3で戦うんだね。前にノノちゃんとやったときと同じだ」

「あのときは楽しかったですね」

 ノノちゃんはニコニコしながら良人さんのバトルが始まるのを見守っているが、いよいよバトルが開始される。

「ボクが選んだのは、リーフィアたん、フライゴン、ファイアローだ」

 50レベル統一ルールになるので、50レベル以上であれば平等に戦える。

 良人さんのバトルは、先発のフライゴンがりゅうせいぐんをした。しかし一発耐えられてしまう。

 今度はフライゴンが攻撃を受けるが、これはフライゴンも耐える。

 次のターン、フライゴンはとんぼがえりで相手を倒しつつ手持ち戻った。

 代わりに登場したのはリーフィア。

 リーフィアは攻防を繰り返し、倒されてしまった。

 次はまた、フライゴンが出てくる。

 そこでフライゴンが相手をりゅうせいぐんで倒す。

 続いて相手の3匹目。

 これは耐久型のポケモンだった。

 最初のチャレンジから厄介な耐久ポケモンに当たるなんて、良人さんってあまり運がないよな。

 一見ここまで有利に戦えていた良人さんだったけど、これにはやはり苦戦した。

 結果。

「うわぁ! なんでー! ボクのポケモンが負けるなんて、信じられないよ!」

 俺と逸美ちゃんと鈴ちゃんは苦笑いである。ノノちゃんは眉を下げて、

「残念でしたね」

「でも、初チャレンジにしては頑張ったわよ~」

「初めてにしてはまあまあじゃないですか? 今回のバトル施設は難易度高いですし。初心者には厳しいですよ」

 逸美ちゃんと鈴ちゃんの言葉を受けても、良人さんはしょぼんとしている。

「ボクのポケモンって、弱いのかな?」

「そんなことないですよ。戦い方次第だとは思いますけどね」

「戦い方かぁ」

「はい」

 良人さんは腕を組んで考えたあと、ポンと右の拳で左の手のひらを叩いた。

「そうだ! 実際に見てみるのが早いと思うんだ。開くん、ボクので戦ってみてよ」

「俺、良人さんの使うポケモンは使い慣れてないからうまく戦えるかわからないですよ?」

「じゃあ開くんのポケモンで戦ってもいいよ」

「そういうことなら」

 でもどうしよう。

 俺は自分のボックスを確認して、どのポケモンでいくのがいいのか考える。あんまり強いポケモンだけでいってもしょうがないよな。

 とはいえ、普段自分で使うポケモンしか持っていないのも確かだし、単純に俺の好きなポケモンを使おう。

「それじゃあ挑戦しますね」

 バトル施設まで来て、受付のお姉さんに話しかけた。

 戦わせる3匹も選ぶ。

「ドキドキするなぁ」

「はい」

「良人さんとノノちゃんがドキドキしてどうするの。あはは」

 さて、対戦開始だ。

 俺の最初のポケモンは、エーフィだ。

「おお! これが噂のシオンくんか。イーブイの進化形だったよね。なんか猫又みたい。上品な感じは開くんに通ずるところがあるかもね」

「そうですか? 褒められてると思っておきますね」

 と、俺は微笑む。

「俺のエーフィ――シオンはサポート型なんです」

 エーフィはすばやさが比較的高くてサポート向きな技をたくさん覚える。イーブイの進化形はサポート向きな傾向があるのだ。

 相手のポケモンは物理攻撃型か。

 サポート技(相手の物理攻撃を半減する技――リフレクター)をして、俺は交換を選択した。

「あれ? もう交換しちゃうの?」

「はい。場を作ってあげたんです。これで、エースが暴れられます」

「エース……。ごくり」

 良人さんってちょくちょく擬音を挟むよな。

「さ、俺のエース、リザードンのりゅうおう様の登場です」

 キラン、という星のエフェクトと共に俺の色違いの黒いリザードンが登場する。

「おお! うおぉ! カッコイイ! なにこれ! 黒いよ? リザードンが黒いよ?」

「色違いです」

「なんでこんなの持ってるの? しかも受けるダメージ少なくない?」

 ぐいぐいと質問する良人さんに、俺は苦笑いを浮かべて答える。

「言ったでしょう? エーフィが場を作ったって。受けるダメージが少ないのは、エーフィのサポート技のおかげです。あと色違いですけど、前にうちの少年探偵団のメンバーの中で色違いブームがあって。それで少年探偵団のみんなは持ってるんですよ」

「リザードンを?」

「違いますって。俺はリザードンだけど、みんなそれぞれ色違いの見た目が好きなポケモンで作ったんです。それより、まずは戦いますよ。メガ進化!」

 俺はリザードンをメガ進化させる。

 リザードンはメガ進化の演出と共に、緑色がかった姿に変化した。

 ノノちゃんと良人さんがリザードンを見つめて、

「やっぱりりゅうおう様カッコイイです」

「カッコイイ~! 強そうだね」

「強いですよ。リザードンはメガ進化が現在二種類あるんですけど、これはメガリザードンXです」

「開くんはX派ってことかい?」

「いいえ。どっちも使います。技構成とか色々違うものまでいますけど、色違いはこの子だけなのでつい使うことが多いんです」

「へえ。ボクも色違い欲しい」

 そんな話をしている間に、リザードンは積み技という自身の攻撃力とすばやさをアップさせる技を使った。

 すばやさはこちらが早かったので、次は相手の技が後攻でくる。

 だが、これもダメージは小さい。

「もう一回積めるかな」

「なんにもしてないけどいいの?」

「リザードンの攻撃力とすばやさを上げてるんです。次のターンからいきますよ」

 そして次のターン。

「さあ。リザードンのフレアドライブ」

「すごい! 一撃だ!」

「さすがりゅうおう様です」

 感心する良人さんとノノちゃんの横で、逸美ちゃんは次に登場したポケモンを見てにっこり微笑んだ。

「これはリザードンちゃんで全抜きできそうね」

「うん。いけそう」

 真剣に良人さんが見つめる中、あとはリザードンが攻撃技を一回するだけで一匹倒し、最後の一匹も倒した。

「これで、勝利です」

「わー。パチパチパチ。すごいよ、開くん」

 拍手までしてくれる良人さん。

 俺はポケモンバトルでそんな風に褒められたこともなかったので、照れ笑いを浮かべて、

「よくある戦術のひとつです。使うポケモン、使いたいポケモンに合わせて、まずはベーシックな戦術を試したりするといいですよ」

「なるほどね」

「あと、さっきの対戦では登場機会のなかったもう一匹のポケモンも、相性を見て組み込んでいるんですけど、三匹の相性も大事です」

「わかったよ! ただ、ボクも色違いが欲しくなっちゃった。ノノちゃんや逸美さんや鈴ちゃんはどのポケモンの色違いを持ってるの?」

 良人さんの質問に、ノノちゃん、逸美ちゃん、鈴ちゃんの順番で答えた。

「ノノはキテルグマのテディです」

「わたしはサーナイトちゃんっていう子なの~。メガ進化すると黒いドレスを着て、かっこよくなるのよ」

「あたしは、実戦用は二匹います。メタグロスのウィリアムくんとチルタリスのステファニーちゃんです」

 鈴ちゃんは二匹も色違いを持っている。少年探偵団の中でも特にコツコツと色違いを作るのが好きなのだ。

「みんなすごい! ちょっと見せてよ」

 三人の色違いも見せてもらって、良人さんはテンションが上がってきたようだ。

「いいねいいね! ボクも俄然色違いが欲しくなってきたよ! よーし! ボクも色違いのポケモンをゲットすることに決めた!」

 元々のバトル施設で勝ちたいって話からは脱線してしまったが、ポケモンの楽しみ方はバトルだけじゃない。色違いの可愛いポケモンを集めるのが好きだって人もいるし、良人さんがやりたいことをやるのが一番だ。

 良人さんは俺に言った。

「開くん、色違いのポケモンのゲットについてボクに教えてよ」


つづく

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