幕間短編 ポケモンの鳴き声

 ポケモンにはゲーム中でもちゃんと鳴き声が存在している。

 ただ、似ているポケモンの鳴き声というのもあり、昔は同じ鳴き声だったけどいまはちゃんと区別されたポケモンもいる。

 俺がゲームをしていると、逸美ちゃんに言われる。

「あら? いまリザードンちゃんで戦ってるの?」

「そうだけど、なんでわかったの?」

「だって鳴き声がしたから」

 逸美ちゃんは記憶力がよく、一度見たものは覚えてしまうのだが、聞いた音を覚えられるという話は聞いたことがなかった。

「でもさ、逸美ちゃんって、一度見たものは覚えられちゃうけど、聞いた音もだったっけ?」

「違うわよ~。ただ、ポケモンちゃんたちの鳴き声はよく聞くから、覚えちゃったみたい」

「なるほど。俺も一部のよく戦わせるポケモンは覚えてるな」

 そんな会話をしていると、探偵事務所に凪がやってきた。

「やあ」

「ねえ、凪。いまから鳴き声聞いてどのポケモンか当ててみてよ」

「いいぜ」

 俺はリザードンを選んで、鳴き声を再生した。

「ふむ。これは簡単だね」

「マジで? やっぱり、みんなわかっちゃうものなのかな?」

 凪が得意そうに人差し指を立てて、高説を垂れる。

「それだけみんなポケモンのゲームはやってきたってことさ。ご年配の人でもポケモンGOはやったことある人多いだろうし、若い人でポケモン知らない人っていないんじゃない? クラスのほとんどがゲームもやってたよ」

「そうだよね。で、さっきの鳴き声はなーんだ?」

 俺の質問に、凪は答えた。

「サイホーンだね」

「間違ってるじゃねーか! 偉そうなこと言っておいて、変な間違いするな。昔は普通の人には聞き分けられないレベルでほぼ同じ鳴き声だったけど、いまは全然違うだろ? リザードンの方が変わったじゃねーか」

 凪がぼーっとしてるので、俺は聞いた。

「な、なんで黙ってるの?」

「いや~。開の説明つっこみがちょっと長くて、途中から聞いてなかったよ。間違ってるじゃ……のところからもう一回言って」

「初めから聞いてなかったんじゃねーか! まったく、おまえがボケたから説明してやったんだろ? はぁ。もういいよ」

 と、俺が呆れながらつっこむと、

「ありがとうございましたー」

 凪が頭を下げた。

「漫才じゃなーい!」

 しかし逸美ちゃんは俺たちの会話を聞いて拍手していた。

 俺はぽつりとつぶやく。

「だから漫才じゃないって」


つづく

AokiFutaba Works 蒼城双葉のアトリエ

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